織田信成さんの「モラハラ訴訟」に感じる危うさ

織田信成さんといえば、明るくて愛嬌があって、最近では素敵な子だくさんパパというイメージが定着していたので、先日の記者会見でのとても痛々しい姿は、私も見ていて辛いものでした。

その日はちょうど、MBSテレビの午後の報道&情報番組『ミント!』でゲストコメンテーターさせていただく日で、記者会見の中継を見ながら打ち合わせ。

会見で配布されたのでしょう、訴状のコピーもその場で読むことができました。

『ミント!』の番組内で、月亭方正さんが、「無視とか陰口とか、それだけ聞くとよくあることちゃうん?て思うけど、織田くんみたいに明るい人があんなに辛そうにしてるんだから、よっぽどのことがあったんやろな」という趣旨のコメントをしていました。

まさに、そのとおり。
私も、「その『よっぽど』が、残念ながらこの訴状からは読み取れません」というコメントをしました。

織田さんがこの間、心身ともに、辛く苦しい思いをしてきたことは、確かでしょう。
そのような状況で、その辛さや、その原因と考えていることについて、的確な言葉で表現できないのはあたりまえです。

ましてやそれは、あまりにも「わかりにくい」暴力性、攻撃性をもつ、なのにひとつひとつは「よくあること」「ちょっとしたトラブル」程度のことと、誰もが思うようなことなのですから。

でも、裁判を起こす以上は、その暴力性・攻撃性をこそ、裁判所に理解させなければならない。「指導」だとか「考え方の違い」だとか「人間関係上のトラブル」や「行き違い」などなど、”何か”の衣にくるまれた、「暴力性」や「攻撃性」を、きちんと説明しなければなりません。

まさにそのために出された(そのはずの)訴状を読んでも、それが読み取れませんでした。

まだまだ、裁判所のこの種の問題への理解は、お粗末なものです。
私たちがどんなに頑張って「被告は原告に対し、いついつ○○という言動をした、これはハラスメントなんだ、明確な悪意をもった人格攻撃なんだ」と主張立証しても、

「○○という事実を認めるに足りる証拠はない」

と、物的な証拠がないのをいいことに、あっさり切って捨てるのは当たり前。
そのうえご丁寧に、

「仮に、そのような事実があったとしても、それをもって違法なハラスメント行為と認めることはできない」

というように、原告の主張する言動について、ひとつひとつご丁寧に切って捨てる。ということを平気でするのが現在の裁判所です。

それはまさに、原告の傷を深め、広げるだけ。
しかも、これだけ世間の注目を集める裁判で、こんな認定をされた日には、「モラルハラスメント」ということについてますます誤った理解が、ゆがんだ認識が、それこそ、かつての「セクハラ」以上に、この社会に浸透することにならないか。

加えて、訴状を読む限りは、濱田コーチからは、「これはある種のスラップ訴訟だ」という反論があってもおかしくないと、私は思います。

スラップ訴訟とは、ひとことでいえば「嫌がらせや報復・恫喝目的の訴訟」です。
ハラスメントとされる各事実について、「よっぽど」だということが明確にされていないことに加え、慰謝料単体として1000万円という請求額の多さからすれば、今後、織田さんは、よほど丁寧に詳細に、そして確実に、事実を積み上げていく必要があると思います。