別居する際、相手と話し合いをせずに、黙って家を出てしまうと、その後の調停や裁判で、夫が、「おまえが出て行ったのは『悪意の遺棄』だ。そのせいで、夫婦関係が壊れたのだ。自分は何も悪くない。だから慰謝料を払え」だとか、「『悪意の遺棄』をした『有責配偶者』からの離婚請求は認められない」などという主張をすることがあります。
たしかに、正当な理由なく家を出て行くことが「悪意の遺棄」にあたる場合はありますが、もともと相手の方に浮気や暴力などの問題があって、それが原因で家を出ることは、「悪意の遺棄」でもなんでもありません。その場合、夫婦関係が壊れたのはそれが原因であって、あなたが黙って家を出たことではありません。
特に、DVやモラル・ハラスメントという問題がある場合には、家を出たいと思って加害者と話し合いをしようとしても、全く対話自体がなりたたないばかりか、それまで以上に(あるいはそれまでにはなかった)ひどい暴行を加えられる危険性もあります。
ですから、この場合には特に、話し合いなど一切せず、相手に気づかれないようしっかり計画し準備をして、黙って出て行くのでいいのですし、またぜひともそうすべきです。
もちろん、その後の調停や裁判では、相手はあなたの「悪意の遺棄」をここぞとばかりに主張するでしょうから(ほとんどの場合は言いがかり的な主張にしかなりませんが)、それに対してはしっかり反論・反証をしなければなりません。