親権は、あくまでも子どもにとってどちらの親と一緒に暮らす(※)のが幸せか、という観点から決められることです。経済力が大事でないというわけではありませんが、それは子どもと一緒に暮らさない親がお金(養育費)を送ることで担えますし、行政によるサポートもあります。したがって、経済力という点は、親権を決めるにあたって重要視はされません。
よく、経済力がなければ親権者になれないと誤解していたり、そのようなことを夫や、いわゆる“跡継ぎ”として子どもを確保したいと考える夫の親に言われたりして、無理をして就職しようとしたり、長時間働こうとしたりされる方がいます。でも、そのような無理をして心身の健康を害したり、子どもに過度の負担になるようなことになっては元も子もありません。
離婚を機に、これからどのような働き方をするかということは、あくまでもあなた自身の人生設計の問題として(もちろん、育児とのかねあいもよく検討しながら)、考えるのでいいのです。
大切なことは、あなたの、これまでの、そして今の、またこれからの、子どもとの関わり方です。裁判所で親権者を決めるにあたって最も大事な要素として検討されるのは、この点です。
※ 親権は、厳密に言うと、「監護権」といって、子どもと一緒に暮らして実際に子育てをする権限と、分けて考えることができます。つまり、たとえば親権という形式的な権限を父が、実際に子育てをする権限を母が、それぞれ持つというかたちの解決も、まれにですがあります。しかし、通常は親権と監護権は一体として考えられていますし、私どもも基本的には親権と監護権を分けることは望ましくないと考えていますので、ここでも親権イコール監護権という前提でお話いたします。