弁護士になってまもないころから、大企業の男女賃金差別事件や、パワハラ集団訴訟など、いくつかの弁護団に参加する機会に恵まれ、たくさんのことを学ばせていただきました。
そんな中で私が痛感したのは、セクハラとは、「性的」な嫌がらせというよりも、その本質は女性差別であり、女性排除のための嫌がらせ(時として暴力)だということです。
あなたは、「自分が女性だから」、こういうことを言われる・されるんじゃないのか?同僚の男性が、同じような目にあい、同じような思いをするだろうか?という、悔しい思いをしていませんか?
でも、会社の相談窓口などに行っても、「このくらいのことでは、セクハラとはいえない」「どこが『性的』言動なんだ?」などといわれ、まともにとりあってもらえない。そんなことで、悔しい思いをしていませんか?
「女性従業員へのちゃん付け」や「『女の子』呼ばわり」が、どうして「セクハラ」なのか。親しみをこめただけじゃないか、何が悪いんだ。
まだまだ、こんな声が聞こえますよね。セクシャル・ハラスメントということの本質的な部分が、充分に理解されていないと感じます。
女性たちを不快にさせ、働きにくくさせ、時には心身の健康を損ない、退職にまで追い詰める「セクシャル・ハラスメント」。
それは、女性を、一人前の働き手、自分たちと対等な働き手と考えず、「性的」な関心の対象としてしかみない意識の表れです。
本来社会で働くのは男の役割だ、女は家庭にいろ。そんな意識に根ざしたこれらの言動に、女性たちは傷つけられ、不快させられ、働きにくくさせられるのです。
そう考えると、体を触るだとか、卑わいな「冗談」など露骨に「性的」なものはもちろんのことですが、「女性だけちゃん付け」や「女の子呼ばわり」といった言動が「どうして悪い」のかということが、よくわかるでしょう。
もともと、「セクシャル・ハラスメント」という概念が生まれ、それが初めて裁判で争われた事件の舞台は、1970年代のアメリカの炭坑でした。まさに、”荒くれ男”たちの肉体労働の現場に、当時の連邦政府の政策で、女性たちが入っていったのです。
そこで巻き起こったのが、「ここは俺たちの、男の職場だ。女は出ていけ、家の中でおとなしくしてろ」という強い排除の圧力であり、嫌がらせや暴力でした。
その多くが「性的」なものだったことから、「セクシャル・ハラスメント」と呼ばれるようになったのです。
男性に対する「ハラスメント」
以上のことはもちろん、男性の「性的」被害を否定するものではありません。
ただ、これを「逆セクハラ」などと呼んでしまうと、セクシャル・ハラスメントの性差別・女性排除という本質がぼやけてしまいます。
いうまでもなく、多くの男性も、働く場、さまざまなハラスメント被害にあっています。とりわけ、人の心と体の健康を蝕む「パワー・ハラスメト」は深刻です。
加えて最近では、男性従業員に対して育児休暇を取らせない、あるいは取ったことで嫌がらせをしたり不利益を課するといった「パタハラ」という言葉も浸透してきました。このことに象徴されるように、男性であるが故に受けるハラスメントへの問題意識も広がっています。
「不倫」に見えるその関係、もしかしたらセクハラかもしれません
最近増えてきたご相談の中には、一見すると、「男性上司と女性部下」との間の不倫(恋愛)関係のようにもみえるけれども、その実体はセクハラ、というよりももはや性暴力に近いと感じられるものもあります。
女性の、上司に対する敬意や気遣いを、男性が「異性としての好意」と勘違いをし、執拗に誘いかけた結果、女性はその力関係に屈して関係をもってしまう、というようにして始まるこの「セクハラ」の暴力性に、男性が無自覚であることはもちろんですが、女性の側も認識しにくいものです。
私たちは、老若男女問わず、広く職場におけるハラスメントで辛い思いをしている方のお力に、少しでもなりたいと思っています。
その他、働く場で起きているさまざまな問題、長時間労働、残業代未払、不当な解雇や雇い止めなど、お困りのときには、どうぞお気軽にご相談ください。
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